子育てってやつ

ボウルビィの愛着理論に救われた話

2023年6月20日

やっぱりボウルビィの愛着理論のおかげだと思うのですよ。

ある日、娘が突然こんなことを言ったんです。

娘
ママとは喧嘩して腹が立ったりもするけど、ママからの愛情を疑ったことは一度もないよ。ずっとママからは愛されているっていう絶対的な自信がある

思わず涙が出そうになりました。(出ませんでしたが)

その信頼感を私は実母との間に築くことができませんでしたから。(でも普通に仲良しです)

母の時代は「抱っこすると抱き癖がつく」「子どもの要求に応えているとわがままになる」なんて言われていました。

しかしそれは後々、子どもが自己肯定感高く育ち、自立していくには逆効果だということがわかり下火になりました。

その証明にもなるのが愛着理論です。

愛着理論は、母子間の愛着関係を研究した心理学者ジョン・ボウルビィ(1907〜1990)によって提唱されました。

この理論は人間の発達と心理的な安定性において愛着関係が非常に重要であることを示しています。(母とは保護者のことであり、母親に限定したことではありません)

彼はこう結論づけました。

親が絶対的に安全・安心できる存在であると、子どもは心健やかに育ち、他者との相互理解を深め、良好なコミュニケーションを築きながら外の世界で活躍するようになる傾向がある。

今回は、この理論をもう少し掘り下げ、私が育児に取り入れたことと、その結果子供が何を感じているかをお話しさせてください。

ボウルビィの愛着理論との出逢い

故・田口恒夫氏(お茶の水女子大学名誉教授)の著書を手に取ったことがきっかけでした。

この本が出版された頃、青少年の凶悪事件や引きこもりなどが問題になり始めていました。障害者教育に携わり、多くの現場を経験されてきた田口氏は「今、へんな子どもが増えている」と肌で感じられたそうです。

その原因は、親子のスキンシップ不足、密着育児(おんぶ抱っこ)が崩壊しているからではないかと。

そして彼の著書には「ハーロウの代理簿実験」も引用され、このようなことも書かれていました。

雷が鳴ると赤ちゃんザルは母ザルにしがみつき、腕の中でまず安心を得る。次に首をヒョイっと出して外の様子をうかがう。外界へ興味を移す余裕が出来たからだ。

一方、赤ちゃんザルを母ザルから引き離して観察。雷が鳴ると赤ちゃんザルは震えながらタオルにしがみついて縮こまり、決して外の様子を伺おうとはしない。精神的に不安定で、成長してからも他者とのコミュニケーションがうまく取れなくなる。

実は今、この後者のような若者が増えている。

実際に現場で多くの子供を救ってきた田口氏は、具体的な手段として

とにかく子供と密着(スキンシップ)すること

と仰っています。

実験内容と子どもの反応パターン

さて、ボウルビィの愛着理論。代表的な実験の一つは「異分離法」です。

異分離法(主に1歳〜2歳の幼児を対象)

  1. 母子の観察:母親と子どもが同じ部屋にいる。子どもは自由に部屋の中を動き回ることができる。
  2. 分離:次に母親が部屋を離れ、子どもは母親がいなくなったことに気づく。その時の子供の反応。
  3. 再結合:一定の時間が経った後、母親は再び部屋に戻っくる。その時の子どもの反応。

母と子をあえて一定の時間(3分程度)離して、また何事もなかったかのように普通に母が部屋に戻ってくる。

その時の子供の反応を4パターンに分けました。

この4パターン、託児所や幼稚園などで全部見たことがあります。皆さんはいかがでしょう。

  1. 安全な愛着:母子の絆が強く、母親が去っても比較的落ち着いて遊びを続ける母親が戻ってくると喜びを示し、抱きついたり、構いたがる。
  2. 不安定な愛着:母親が離れることに強い不安や抵抗を示す。母親が戻ってくると泣き叫んだり、母親にくっついたり不安定な反応を示す
  3. 回避的な愛着:母親の出発や帰還にほとんど反応せず、遊びを中断することがある。母親を避ける傾向があり、無関心な態度をとることも。
  4. 混合型の愛着:一部の子供は、母親に対して恐怖や矛盾した、不安定な行動をとる時がある。

そしてこれらの分析から、愛着理論の基本的な概念が確立されて行きます。子供が母親像を失うことで、「発達に有害な影響」を被ることを明らかにしたのです。

大事なポイント

ボウルビィはさまざまな学問にまで手を広げ研究を重ねました。そして、幼少期の愛着形成がその後の子どもの人生に大きな影響を与えるという結論に至りました。

今では当たり前のこの内容も、当時は医学会から反対され、追放されたそうです。

後に彼の理論は世界で認められるようになりました。現在の児童心理学、セラビー、成人の精神疾患の治療などはこの愛着理論がベースになっているそうです。

ボウルビィの愛着理論(めっちゃ簡単にまとめると)

  1. 愛着関係を築いた場合:母親が子どものサインや要求に敏感に反応し、そのニーズを満たした場合、子どもは安心感を得られる。母親の存在が安心感を与えると、子どもは新しい環境や人との交流に挑戦し、自己肯定感を高め、社会的なスキルや自己調整能力を発展させることができる
  2. 愛着関係が築かれなかった場合:愛着不安が長期間にわたって持続すると、子どもは不適切な対人関係や社会的なスキルの発達の遅れ、攻撃的な行動や引きこもりなどが見られる場合がある。また、自己肯定感が低下する可能性があり、問題行動や情緒的な不安定さが見られることがある

このことからも、抱っこ癖がつくというのはとんでもない言いがかりであるだけでなく、子どもの健やかな精神の発達を阻害するということがよくわかります。

密着育児が親子を救うらしい

ボウルビィの愛着理論と代理母実験を理解すると、子どもの精神的発達には段階があり、まずは絶対的な安心感を得ることが大前提だということがわかります。

保護者は複数存在していても良いのです。赤ちゃんというのは、無意識に自分にとって安全な人を探すのだそうです。

では自分が安全基地になろうとしても、仕事や体調など、事情によっては四六時中子供のそばにいられない方も多いかと思います

でも、安心してください。

密着育児、スキンシップがそれらを一気に解消してくれるのだそうです!(共依存的な解釈ではなく、愛着関係構築のためのスキンシップという意味です。)

さらに興味深いのは、幼い頃にスキンシップが足りなくて情緒不安定に育った人も、ある程度成長してからスキンシップをすれば改善(?)され、本人が満たされて安定していくのだそうです。(田口氏の著書より)

ただし、時間は幼少期の倍はかかると書いてありました。(子供によって特性がある場合は専門家によるサポートが必要だそうです)

つまり「スキンシップ」が健全に子供が育ち巣立っていくためのキーワードなのですね。

具体的に私がやったこと

知れば知るほど責任重大な"親"という任務。

田口氏の著書を読み散らかした後、心がけたこと。あくまでも「心がけた」ことです。

  • 添い寝
  • 添い乳
  • 抱っこ&おんぶ
  • 子供が呼んだらとりあえず返事
  • 子供が手を伸ばしたらとりあえず握る
  • イヤイヤ期は心を無にして抱っこ(目が死んでいた)
  • たまにおんぶしながら家事
  • ハグとキスは日常(今も)
  • 愛している、大好きだと言葉で伝える

でもこれ、きっと普通のことですよね?

何を今さらって感じていらっしゃる方も多いかと。でも、世の中には意識しないとできない人もいるのです。

実際、私は頑張らないとできませんでした。他のことはうまくできなくても、スキンシップだけは頑張ろうと。

当時はこういうことを頑張らずに出来ているママさんたちが眩しくて、羨ましかったです。

添い寝・添い乳はいろんな事情で叶わないこともあるかと。

ヨーロッパでも子供部屋にベビーベッドを置いて一人寝させている家庭は多いです。日本よりスキンシップが多いからバランス取れているのでは?と個人的に思いました。

でも、ヨーロッパにも「青少年が起こす変な事件」は多いです。

娘(13)の言葉

つい先日、娘がこんなことを話してくれました。

娘
クラスメイトの女子たちが、最近こぞってセラピーに通い出している。必要ならば通うべきだけど、それをいちいちアピールしてくるのにちょっと疲れる。

ああ、精神的に不安定になりがちな年齢だよね。メンヘラアピールしたくなるお年頃だしね。あれ?でもなんでうちの子たち、そういうのないのかしら。
jucom
jucom

娘
だって、なるべく自分で解決したいから。あと、ママがセラピストみたいだから、ママに話していつも解決している

この言葉ももらっちゃいました。

もう、大成功じゃん。成績とか生活態度とか色々言いたくなるけど、我が子がそう言ってくれてるってことは、私は安全基地になれてるってことじゃん。

私、叱る時は鬼以上に怖いらしいし、他のクラスメイトたちと比べても子供に厳しくしている方だという自覚もあるけど、大丈夫じゃん。

娘がそう感じてくれているのなら、少しは報われたってことかな。

息子(16)の言葉

息子はというと。先日しみじみと、こんなことを語ってくれました。

息子
息子
お母さんとはケンカもするし、その時はいなくなればいいのにって思うけど(おい)。何かあった時に真剣に話せばちゃんと理解してくれるし、一緒に解決してくれるってことがわかってる。自分は親から愛されてるなって感じてるよ

よかった。本当に良かった。

実は、息子は今でも不安なことがあると黙って近づいて体をくっつけてきます。転校した時、大きなプレゼンを控えている時、黙ってくっついてきます。

本人には自覚がないようです。でも、私とハグをするとめちゃくちゃ安心するのだそうです。16歳、まだまだ可愛いですね。

相乗効果

今回、この記事を書いていて不思議に思いました。あれ、私にとっての安全基地は一体どこなんだろう?と。

?それも違う気がする。(ごめん)

子ども?半分そうかもしれないけど違う気がする。

リア(愛犬) ギリギリ違う気が。

で、考えてみて気づいてしまいました。私、いつの間にか自分自身が安全基地になってるかも!と。

夫と、子どもと、犬と、スキンシップ盛り盛りで生活しているうちに、私自身がいつの間にか満たされ、自分の足でしっかり地面に立っていたのです。

子どものためと思ってやっていたはずの密着育児でしたが、一番救われていたのは私自身でした。

1人でもできるセルフハグ

もし、現在恋人も家族もいなくて1人で生活されていたら、セルフハグをおすすめします。

騙されたと思ってやってみてください。じーーーんと体と心に温かいものが浸透していくような感覚になります。

セルフハグ : 両手をクロスさせて自分の体を抱きしめ、「愛しています」と唱える

恥ずかしい!でも誰も見ていませんから!私もたまにやります。なんかね、心がゆっくりゆっくり落ち着いて満たされていくのですよ。

ちゃんと心理学的にも科学的にも根拠がありますのでご安心ください。幸せホルモン(オキシトシン)いっぱい出ますから。

終わりに

ボウルビィの愛着理論なんて知らなくても、ほとんどの方が普通に愛情を注いで立派に子育てをされています。友人のお子さんたちは皆根っこが優しくて良い子ばかりです。

なので、普通に子育てをしていたらこんな情報必要ないのでしょうけど。

でも、普段より気持ち多めにスキンシップをしたら、こちらの幸福度も上がるかもしれません。

娘と息子にも、いずれ彼ら自身が安全基地となり、そこで自分が癒される経験をしてもらえたら嬉しいなぁ。

そうそう、ボウルビィの愛着理論に興味を持たれた方は、ぜひ英語のWikiを読んでいただきたい。今はブラウザで一括翻訳できますから。日本のWikiの何倍も詳しく幅広く説明してあり、大変読み応えあります。

Attachment theory

ボウルビィが生きていたら伝えたかったです。あなたのおかげで、育児と自分自身が救われた女 (49) がいるよって。

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