ドイツの教育事情

デンマークから学ぶ歴史教育の目的【逆留学③】

2023年4月19日

4歳からドイツで育った息子が、15歳になってドイツから日本へ短期留学しました。その感想を元にしたシリーズ③です。

今回は歴史教育、テスト形式、そして授業におけるディスカッションについて書きたいと思います。

これは私も長年興味を持っていたテーマでもあります。息子に根掘り葉掘り質問してしまいました。

息子よ、丁寧に答えてくれてありがとう。(以前Instagramに投稿した内容を手直ししました。)

きっかけは息子のひとことから

息子
息子
日本の学校で歴史の授業を受けたとき、年表に沿って穴埋め式で勉強していたのに驚いたんだよね。僕のドイツの学校だと、その日のテーマを学んだ後はずっとディスカッションしている。テストも記述式で、1回のテストでレポート用紙数枚分もの文章を書く時があるよ。

その昔、私がヨーロッパの教育に興味を持った1番の理由は、まさに歴史教育にあります。

しかしながら私もそんなことはすっかり忘れていました。息子がふと漏らしたこの発言を聞いて思い出したのです。そうだ、私は昔デンマークの本を読んで歴史教育への価値観の違いに大きなショックを受けたんだ。

息子が4歳、娘が1歳の時にドイツへ移住し12年目。子どもからいつかそんな話が聞ける日を楽しみにしていました。

日本の学校を知ってから、改めて考えたドイツの教育

息子が短期留学した日本の学校は、中高一貫のアットホームな私立校です。

進学校ですので、教師陣は研究熱心で好奇心旺盛な方が多く、息子にも色々と話しかけてくれたそうです。ドイツと日本の違いを質問したり、息子が授業で発表する機会を設けて花を持たせてくれたり。話を聞けば聞くほど素晴らしい学校です。

数ある学校の中であの学校に留学できた息子は幸せ者だと思います。許されるのなら私も通いたいほど。(許されません)

それだけ熱心な先生方が揃っていたのなら、きっと授業はよく研究され工夫を凝らした、濃い内容だったはず。息子を受け入れてくださったのも、生徒たちに良い化学変化が起きるのを期待してのことでしょうから。

ではその恵まれた環境でありながら、なお違いを感じるドイツの授業とは。母ちゃんは興味津々。息子にたくさん質問をしてしまいました。

ドイツの学校しか知らなかった時と違い、改めて「学校で学ぶ」ことについて考えさせられたようです。

お子さんの教育の選択肢を増やしたい方に、数ある情報の一つとして読んでいただけたらと思います

ここで我が家の状況を説明

  • 我が家は日本人ファミリーです。
  • 息子が4歳の時にドイツへ移住、ずっとドイツの教育を受けて育っています。
  • 留学したのは彼が15歳、ドイツの学校で10年生の時。
  • ドイツは州ごとに教育制度が異なり、学校や教師によって授業内容に大きな差があります。
  • このシリーズは、数あるドイツの学校の中の1校に通っている15歳男子から見た日本の感想と、日本の教育で育ってきた母の主観にすぎません。

これまでの日本への逆留学シリーズはこちらから。

歴史教育と投票率は連動している

まずは私が日本以外の歴史教育に興味を持ったきっかけをお話しさせてください。それはこちらの本との出逢いでした。(2008年のこと)

スズキ氏は「デンマークでは、歴史教育とは過去の成功や失敗から学び、今後の国の発展に活かしてこそ価値があると考えられている」と、日本の暗記式の歴史教育に警鐘を鳴らしていました。確か。(引っ越しを繰り返す中で本を紛失してしまいました。ショック)

過去に誕生した大小様々な国の繁栄と衰退には必ず理由がある。当時の国の運営システムやそこから生まれた文化の流れからその理由を導くこと。そこから問題点や改善点を見つけ出し意見を述べ合う。それが歴史教育を行う意味であると。

へえー、それがデンマークの歴史教育!そんな勉強をしていたら、政治への関心が生まれるに決まっているじゃありませんか!その甲斐あってデンマークは、なんと選挙の投票率80%を実現させているのだそうです。

教育は重要な国家事業

デンマークの本を読み、歴史教育にそのような価値があったことを知った時、雷に打たれたようなショックを受けました。

私は暗記式の歴史授業しか受けたことしかありません。世界史の授業も日本史の授業も苦手でした。この世にデンマークのような価値観から歴史教育を行っている国があるなんて。全く知りませんでした。私もそんな教育を受けてみたかったなぁ。

そもそもデンマークにおいて教育とは「国家を支え発展させる人材を育てる国家事業」と捉えられているそうです。教育実習は1年間、教育大学でも国立大学と私立大学ではカリキュラムが全く異なる…。「教育」に向き合う姿勢が素晴らしいの一言に尽きます。

ベースは「対話教育」

「生きた教育」を実践するためのカリキュラムを経た教師陣が集まる義務教育。現場では「生きた教育」を実現するために、デンマークでは「対話教育」を重視。教師対生徒、そして生徒同士の対話を中心に授業を進めていくのだそうです。

なぜなら、対話からコミュニケーションが生まれ → 他者との相互理解が生まれ → 個人の人格形成を促し → 自己の役割(存在価値)を発見することにつながるから。

これが、幸福感の高い子供が育った理由の一つなのですね。

歴史教育も、こうした対話教育がベースにあるのとないのとでは、全く違った結果になるのでしょうね。ますます興味を持ったのでした。

デンマークの対話教育に関して、こちらの記事に実際の授業風景が掲載されています。家庭でも実践できそうなヒントが見つかるはずですので、ぜひお読みください。

もう少し踏み込んだレポートはこちら。

そんなわけで、まだどっぷり日本にいた頃デンマークの歴史教育に感銘を受けた私。そんな国で子育てをしてみたいな〜と思い始めました。

結局、デンマークではなくドイツに縁があり、今に至ります。ドイツの教育で育っている息子の話を聞いていると、ドイツの歴史授業もなかなか興味深いですし、デンマークの歴史教育に近いように思います。

え、てか日本の歴史教育の方が、世界的には少数派ってことなの?

息子が通った日本の学校では歴史の授業が第二次世界大戦のテーマだったそうで、息子からこんな質問をされました。

日本は戦争の時にすごく悪いことをたくさんしてきたよね。どうしてそれを学校で教えないの?
息子
息子

あら、気づいちゃった?(この内容については息子とじっくり話をしましたが、ここでは省略します。)

jucom
jucom
ドイツの学校でナチスドイツのことはもう勉強したの?
ギムナジウムにはいってからもう何度もやったよ。日本に行く前も、ちょうどドイツの学校はナチスドイツが歴史のテーマだったよ。
息子
息子
jucom
jucom
なにそれ、もっと詳しく!

というわけで、次回はドイツの歴史授業で息子がナチスドイツについて学んだ内容と、実際にどんなディスカッションが行われているのかをお伝えします。

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