ドイツの小学校

子どもと教育

ドイツの学校で人種差別

ドイツの学校内で普通に差別はあります。決してうちの子達だけの話ではありません。白人以外は皆経験しているであろう人種差別。

もちろん良かれと思って私たちはドイツに住んでいます。ドイツの学校に子どもを通わせているのだって、私だけでなく本人も望んだことですしね。過去記事にあるように、ドイツのディスカッション式授業や歴史教育に感動し、通わせて良かった!と心から思っています。

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ですが、我が家は子どもも含め、名前も国籍も見た目もめっちゃ日本人でアジア人です。ドイツに移住してから12年間、ちょいちょい人種差別を受けながら暮らしてきました。欧州在住のアジア人で、人種差別を経験していないという人なんてゼロじゃないかしら。知らんけど。

まあ、聞いてください。

小学1年生で受けた人種差別

息子も娘も、小学校へ入学してから早々に差別の洗礼を受けました。ほんの一部のクラスメイトから。

人差し指で両目の目尻を引っ張って吊り目のポーズをするという、アジア人差別の典型的なジェスチャーがあります。それを目の前でされた上に、「なんでこんな細い目してんの?」と薄笑いを浮かべながら言われたのです。小学1年生の頃の話。

このジェスチャーがアジア人に対する侮蔑的な表現だということを知らない人は意外に多いそうです。大人でも知らずにふざけてやる人がいると知ってクラクラしました。無知は恥であり罪ですね。

アジア人である私たちはせめて知っておいた方が良いかと思います。

娘は、それに加えて「なんでそんな低い鼻してるの?息吸えるの?」とも言われたそうです。ニヤニヤしながら。

つまり、明らかに悪意があったわけです。つい先日まで幼稚園児だった6歳や7歳の幼い子がそれをしたことに衝撃を受けました。

もちろん、担任の先生にすぐ報告をし、相手の生徒と親に厳しい対応をしてもらいました。

※逆に、日本のTV番組等で白人役の人が付け鼻をしてアクセントをオーバーに真似ておどけているのも差別にあたります。Mr.ベーター・・・

誕生日に持参したケーキを目の前で捨てられた息子

次は確か息子が小学3年生の頃の出来事。ドイツの学校や職場では、誕生日を迎えた本人が当日にケーキを持参し、クラスメイトや同僚に振る舞うという(面倒な)風習があります。

息子も誕生日に人数分のカップケーキを学校に持参しました。クラスメイトも誰かが誕生日だとウキウキしながら甘いものを楽しみにしています。

ところが、クラスメイトに配った後に、女子2人が息子の目の前でカップケーキをゴミ箱に捨てたのです。さらに、差別的な言葉を使って「あなたが持ってきたものなんて汚くて食べられない」と言ってきたそうです。ひどい。

ですが、その頃の息子はというと。持ち前のコミュニケーション能力を活かし、ほとんどのクラスメイトと仲が良くなっていました。彼女までできて、ハッピーな毎日な中で起きた出来事。

ゴミ箱に捨てるシーンを目撃したクラスメイトが激怒して先生まで話が行き、先生が本人と親に厳重注意とペナルティを出しました。

が、それでも息子はとても傷ついていましたし、私もとても悲しい気持ちになったのを覚えています。

(その後いろいろあって、彼女たちとは普通のクラスメイトとして仲良くなりました。それはまた別の機会に。)

子どもが人種差別された時、親ができること

百歩譲って、彼らに差別の意識がなかったとしても「じゃあ仕方がないね」とはなりません。自分のやったことがどんな意味を持つのか。相手の人種や国籍によっては、個人ではなくルーツも含めて侮辱する意味になること。その罪の重さ。それらを親や家族が教えてくれないのなら、周りの人間が教えなくてはなりません。

息子と娘には、そういうことがあった時はすぐにその場で担任に報告するように言いました。もしあなたたちが言えないなら、私が先生に直接言う。相手の親にも抗議するからと。

この時に、担任の対応を見極めるはとても重要です。まともな教師なら、相手の子供を厳重注意した上に親へ報告し、家庭でしっかり話し合うようにとかなりキツく伝えてくれるはず。その後もクラスで同じことが起きないように気を配ってくれます。

しかし残念なことに、そんな教師ばかりではありませんから。もし、担任が「まあ、彼らにも悪気はなかったわけだし」的な対応をしたら、そのクラスは担任を含め「ハズレ」だと思った方が良さそうです。この先行動がエスカレートしたとしても、おそらく先生は守ってくれません。ということは学校も守ってくれないということです。これは日本のいじめ問題も同じですね。

自分たちで戦うか、さっさと見切りをつけ転校するか考えた方が良いかと思います。

担任教師からの人種差別

これこそあってはならないことですが、実際に教師からの差別もありました。息子は授業中にわざわざ名指しでバカにされたこともあります。この時息子は泣きながら帰宅しました。(これがきっかけで、ギムナジウム受験を早めたことを過去記事に書きました)

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そして現在通うギムナジウムでも、アジア系やアラブ系の生徒に対してあからさまに態度が違う先生がいます。白人の生徒と同じように勉強ができて同じように発言しても、同じように評価をしてもらえません。

しかも教師の場合は証拠を明確に残さないので、差別を証明するのが難しいです。親が指摘しても「そんなつもりはない」と言い訳をして誤魔化されるのがほとんど。ただでさえ謝らない人たちですし。

世間からの評価が下がるのを恐れる学校側は、もちろんこちらの味方にはなってくれません。(我が家の場合は条件書きをして解決)

生徒からの差別発言と学校側の対応

娘のクラス(ギムナジウム)には、娘以外にもアジア系の子、アラブ系、アフリカ系フランス人の血を引く子がいます。

娘を含めその子たち全員が、他学年の生徒から一度や二度は差別用語で暴言を吐かれたことがあります。昼食時にカフェテリアの列に並んでいる時、廊下ですれ違う時。もちろん稀なことですが、あるにはあります。

その場合はすぐに担任に報告し、差別発言をした生徒にはペナルティが課されます。差別行動はかなり重い罪になり、ペナルティが複数になると親が呼び出され、それでもひどいと退学させられる場合もあります。(教師に対してもこの処置をしてほしいところ)

息子と娘の悟り

歳の近い、生徒からの差別はムカつくしすぐ言い返せる。でも大人からの巧みな差別は悲しくなると言っていました。

差別はしょっちゅうあるわけではなく稀にしかないけど、無くならないだろうね。でも、自分がアジア人としてドイツで暮らしてよかった。ドイツ人や白人からは見えない世界を見ることができるから。差別する側には絶対に回りたくない。

まあ、ほとんどの子は皆親切で、自慢できる友人たちだから。ドイツで暮らしていてよかったと思ってるよ。

おかげさまで逞しい子に育っているようです。

日本にいると見えにくいもの

私自身、日本に暮らしていた時は差別に対する認識が甘かったと思います。ドイツへ来てやっと自分の鈍さや無知さに気づきました。

ドイツ人ライターのサンドラ・ヘフェリンさんがそのことを的確に指摘していらっしゃいます。息子は日本へ短期留学している間、日本に住む日本人に対して同じことを感じたそうです。私も思い当たる節があるので、読んでいて耳の痛い内容でした。

日本人はどこか「アジア人」や「東洋人」という言葉をひとごとのようにとらえる傾向があると感じています。PRESIDENT Online

↑ぜひ、この記事は1ページ目から遡って読んでいただきたいです。

この認識が鈍いと他の人種への差別にも鈍くなり、自分も差別する側へ回ってしまいます。そして自分が差別していることにも気づきません。(私も未だ自信がありません)

あからさまな差別をしてくるのは大人でも子供でもあくまでもほんの一部の人。そういう浅はかなわかりやすい人よりも、一見まともそうに見える人の方が厄介だったりするのですよ。彼らはがサラッとごく自然に、まるで呼吸するかのように差別するからです。もちろん本人に自覚などありません。

根が深い差別の中で生きること

ロシアとウクライナの戦争が始まった時、ウクライナから多くの人が他のヨーロッパ諸国に避難しました。その時の欧州の反応や報道で、DNAに刻み込まれているかのような白人至上主義が浮き彫りになったのです。

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公の場でこんな発言をしちゃうほどのウクライナフィーバー。確かに大変な事態ですよ?ですけど、ねぇ?

優遇される白人難民の陰で、国境を越える電車やバスに乗せてもらえなかった人たちが大勢いました。ああ、同じようなことが起きた時、私たち日本人もきっと見捨てられるのだろうと悟った出来事でした。私たちは青い目でもなく金髪でもありませんから。この中で私たちは生きているのだなぁと。

でも、良いところもたくさんあるのですよ!そうでなかったらとっくに日本へ帰国していますから。

私の子育ての最終目標はこれ。

たとえ無人島に流れ着いたとしても、知恵と知識でもって逞しく生き延びられる人間に育てること

子どもたちには本質を見抜く力をつけてもらって、幸せな人たちと暮らしていってほしいと願うばかりです。

私も、どこでも生きていかれる、しなやかな人間を目指しています。でも無人島はイヤ。

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