ドイツで犬の学校を見つけるまでの話はこちら↓
さあ、いよいよトレーニング初日。ナビを設定し、家から車を走らせること40分、何もない広大な空き地の真ん中にそれはありました。
つまり信じられないくらいクソド田舎に、目的地の学校「Zwanglos」(ツヴァングロス)がありました。ほんと田舎にもほどがある。
初の授業は個人レッスン。私たちの現状を把握するカウンセリングも込みです。どうやらトレーナーっちゅーもんは、私たちが車から降りて犬と一緒に彼の元へ来るまでの様子を見て、だいたい何から始めれば良いのかを判断できるのだそうですね。もちろんそんなことを知らない私達は、広大な野原に興奮したリア(うちの犬)に引きずられるようにして待ち合わせ場所へ歩いて行きましたよ、アフォみたいに。それをぜーんぶ見られていたとは。
Zwanglosの校長兼トレーナーのステファンは、獣医師の資格も持っているそうです。犬の習性を熟知しているからこそ、叱って押さえつけるトレーニングではなく犬の習性を活かしたトレーニングをモットーとして、学校名を「Zwang=強制、無理強い」を「los=外す」にしたのだそうです。
「現在の困っていることはなに?」と尋ねられたので、人に飛びつく癖、リードを引っ張る癖、拾い食い、リードを外して遊ばせている時に呼んで戻ってこないことがあるなどを挙げ連ねました。
黙って聞いていたステファンは、最初にこう言いました。
「リアを含めて、家族の中で一番のボスは誰?」
するとね、家族が一斉に私を指差すんですよねーなんでだろ。
「OK. じゃあ次に犬の習性について少し話そうか。
まず、犬というのはどんな感情があるか。大まかに言うと
- 楽しい、嬉しい、気持ち良い
- 楽しくない、嫌な気持ち
の2つ。人間と違って、犬はとにかく”楽しいこと”をどんどんやっていく。基本的に嫌なことはしないんだよ。君たちだって楽しいことや嬉しいことしかしたくないでしょう?それと同じ。
じゃあ犬にとって、飼い主からもらえる気持ち良いこと、楽しいことってなんだと思う?
☝︎犬にとって楽しいこと
1. 餌をもらうこと
2. おもちゃで遊ぶこと
3. スキンシップやアイコンタクト
きっとこれらはいつもやっていることだよね。」
それからステファンは私たちに3つ質問をしました。
1. リアは餌をいつどこで食べているか
2. 彼女の自由に遊べるおもちゃはいくつあるか
3. どんなタイミングでスキンシップをしているか
私たちの回答は、
1. 朝晩2回、キッチンで
2. 10個くらい、リビングのかごに入れて自由に遊ばせている
3. 甘えてきた時、寝ている時、とにかく頻繁に
それを聞いたステファンは一言。
「彼女はクイーンなんだね!」
え。どういうこと?
「彼女は何も努力しなくても、毎日この3つが満たされている。何も努力しなくてもお腹いっぱいご飯を食べることができて、いつも自分が遊びたい時に遊びたいものがたくさん目の前にあって、自分が触って欲しい時はいつでも触ってもらえて。彼女は毎日やりたい時にやりたいことを、自分の意思で自由にすることが出来ていて、それが当たり前だと思っている。
だから、外で遊んでいる時に「来い!」と呼ばれても、自分が行きたければ行くし、他に興味の惹かれるものがあればそっちに行く。自分がやりたいようにやるのが当然だから。彼女の中で飼い主のコマンドの優先順位が低いってこと。
つまり、彼女はこの家族の頂点に君臨していて、自分がボスだと認識しているんだよ。」
なんてこった。
でもね、私が「おすわり」とか「伏せ」とか言うと、リアはきっちりやるんですよ。他の誰がコマンドを出すよりも、リアは私のコマンドをよく実行していました。だから私がボスでリアはそれに従っていると思っていました。それが本当は逆だったとは。んもう、あんな可愛い顔してリアたんったら!めっ!
「まず君たちは、このステータスを変えていくことから取り組まなくてはならない。犬はボスに従う動物なのは知っているよね。今は彼女がボスだから君たちに従わないのは当然。でもリアのステータスが下がり、それを彼女が自覚したら躾がうまくいくようになる。犬にとっては、本来ボスに従うのも心地よいことなんだよ。彼女にボスが出来れば、自分のやりたいことよりもボスが優先順位の上位になり、公園で遊んでいる最中でもすっ飛んでくるようになるよ。」
つまり今のままでは暖簾に腕押し状態。トレーニングの前に、まずはボスの座を勝ち取らなくてはならないのですね。はぁー、知らないことばかりです。
すっかり人間のプライドを傷つけられた私たちは、早速ボスの座を奪回すべく、何をしたら良いのかステファンに尋ねるのでした。アフォみたいな顔して。
ってことで次回は下克上の方法に迫ります。