2025年、ベルリン市内のギムナジウム人気ランキングで、息子が通っていた学校がまさかの1位になりました。
Das sind die beliebtesten Schulen Berlins (B.Z.)
ただしこの「1位」というのは、Abiの平均点や進学実績のランキングではなく、第一志望に選んだ人数と募集枠の倍率による人気度ランキング。
このニュースを知ったとき、私の本音は「ほんまかいな」でした。そんなに良い学校か?トラブルも多かったよ?と。
でも子どもに話を聞くうちにわかりました。「ああ、このギムナジウムを選んで大正解だった」と。
無事に卒業した息子を前に、やっと肩の荷が降りて、8年間悩んできたことが報われた気がしました。
そして、8年前を思い出し、感慨深い思いに浸ったのでした。
何もわからず、手詰まりだったからこそ書いた、"理想のギムナジウムの条件"。
あれ、叶っていたんだなぁ。
私は、自分の努力だけではどうにもできない分野の願いを叶えたいとき、よく“条件書き”をします。
「何を叶えたいのか」「いつまでに叶えたいのか」「譲れないポイントは何か」を書き出すのです。
すると不思議なことに、ひょんな出会いや情報がつながっていくのです。まるで私が書いた内容を世界中が知っていて、協力してくれているかのような。いつも驚かされます。
息子のギムナジウムとの出逢いもまさにそのひとつでした。
今回は、このエピソードを通じて、条件書きについて触れていきたいと思います。
それは、ギムナジウムの情報 "ゼロ" から始まった
息子が10歳のとき、家族で地方都市からベルリンへ引っ越しました。小学4年生での転校は簡単なことではありません。しかも担任とうまくいかず、日に日に息子の表情が曇っていくのを見るのは、親として本当に胸が痛みました。
居心地の悪い環境から脱出する目的で、6年生まで在籍するつもりだった小学校を4年で終え、5年生からギムナジウムへ進学することにしました。
その経緯は、シリーズで詳しく書いています。条件書きをしたら、まるで導かれるように運命的な出会いがあり、今のギムナジウムへ繋がりました。
条件書き後に奇跡の出逢いを果たしたストーリーはこちら↓
つまり、情報ゼロ、知り合いゼロ、ベルリンのギムナジウムの名前を一校も知らない状態で、「条件」を書きました。すると、数ヶ月以内に思わぬところから縁がやってきたのです。
具体的に何を書いたかは、後半に載せています。
ベルリン・志望校ランキング1位に疑問(母)
さて、奇跡的に知り合った方から今のギムナジウムを紹介してもらい、無事に進学できた息子。
けれど、その後8年間は心から「ここで良かった」と言い切れるわけではなかったのです。
- 理不尽に思える出来事もあった
- 教師あるまじき言動をする先生が何人もいた
- Abi(大学入学資格試験)の平均点ランキングで、学校が上位に入らない
例えば、フランス語の先生。息子は彼から強く排除されたことがあります。私の元へ、ものすごく失礼なメールまで届きました。あの時ははらわたが煮え繰り返ったし、とても悲しかった。(このフランス語の先生に関しては、息子と一緒に条件を書き、のちに解決しました。)
その他、本当にいろいろありました。
それなのに、志望校ランキング1位とは、これいかに。
小規模の学校なので、そもそも募集人数が少ないから倍率が高くなったのでしょうけど、それにしても、ねえ。
そういえば、立地だけはいいなぁ。息子の学校は、ベルリン屈指の高級住宅地のど真ん中にあり、繁華街からも離れています。
全体的に治安が良いとは言えないベルリン市内で、立地だけは抜群に良いのです。それが理由なのかしら。
そこで、息子と娘はどう思っているのか、聞いてみました。
「どうしてうちの学校が1位になったと思う?」
すると、思いがけない回答が返ってきたのです。
「5年生からのクラスだからよかった」
息子と娘の答えは、共通して
「5年生からのクラスだったから、特別によかった」
「理系に特化した学校だからよかった」
というものでした。
息子の通っていたギムナジウムは、5年生から入学するクラスが1クラスあり、その後7年生から新たに2クラスが追加される仕組みです。
つまり、5・6年生は1学年1クラス、7年生から1学年3クラスになります。卒業までクラス替えはありません。そのため、5年生から入った子どもたちはAbiまでの8年間をずっと同じ仲間と過ごすことになります。
5年生組は、比較的成績が良く、勉強好きな生徒が集まってきます。加えて、親も教育熱心な人が多い印象です。
他のクラスと比べて学習スピードも早く、飛び級の子もいます。で、理系に特化している学校…なるほどなぁと。
⚠️誤解のないようにお伝えしますが、息子は、いたって「ふつう」でした。頭を抱えることも多かったです。娘は、今後の伸び代に期待。
ちなみに、ベルリンのギムナジウムには3つのパターンがあります。
- 5年生からしか受け入れない学校
- 7年生からしか受け入れない学校
- 5年生と7年生の両方を受け入れる学校
息子の学校は③にあたり、この「5年生組」が学校のカラーを形作っているのだそうです。
「他校と比較しても満足している」
まとめると、こんな理由を挙げていました。
- 5年生からのクラスの雰囲気がとても良い
- 教師陣も5年生組に力を入れている
- 学力の高い子が集まり、飛び級の子もいる(どの学校にもいるわけではない)
- 他校でよく聞くような事件やトラブルがない
- 親が社会的に活躍している家庭が多く、クラス全体がドイツだけでなく世界情勢への関心が高い
- 授業やプライベートにおいて、ディスカッションのレベルが高い(他校の生徒と会話していて感じるそうな)
- 家庭環境が安定している子が多く、前向きな空気がある
- 頑張る人を応援し、妬まない雰囲気
入学当初はわかりませんでしたが、他校の生徒との関わりが増えていくうちに、自分たちのギムナジウムの特色に気づいていったそうです。
⚠️何度でもお伝えしますが、そんなクラスの中で息子はというと、いたって「ふつう」の、ただ元気の良い生徒でした!残念ながら謙遜ではありません。が、クラス全体の雰囲気が、本当に良かったそうです。
息子たちの話を聞いているうちに、「ああ、私が2016年に書いた条件が全部ここにある」と気付きました。
補足 : Abi平均点ランキングのからくり
ここで補足しておきたいのは、Abiの平均点ランキング=優秀な学校ではないということです。
実は、Abi(大学入学資格試験)の内容は学校ごとに違います。簡単な試験を出す学校では平均点が高くなりやすいそうです。逆に息子の学校は「学力が高い上にAbiが難しいので有名」なのだそうです。(知らんかった)
そんな難しいと噂のAbiにおいて、5年生組である息子のクラスだけは、満点や高得点を取る子が続出しました。本当に賢い子達なんですねぇ。(他人事)
ただし、平均点は他の2クラスも含め、学年全体で計算されるため、ランキングには反映されにくいのです。
全国統一の問題を使用する、日本のセンター試験とは違うのですね。
言うなれば、大学ごとに試験内容の異なる「二次試験ランキング」みたいなものでしょうか。ランキングの意味はあるのかしら。
これを知って、ギムナジウムの学力レベルとAbiの平均点が一致しない理由が、やっとわかったのでした。
クラスメイトに助けてもらった息子たち
何度も言うように、息子の成績は「ふつう」でしたから、息子のギムナジウムの5年生組がそんなことになっているとはつゆ知らず、悶々としていたのは私だけだったようです。
だって、8年間、決して順風満帆ではありませんでしたから。
ですが、家庭内でドイツの政治や世界情勢などについて議論した時など、息子や娘が、想像以上に深く考察し、明確な意見を持っていることに、よく驚かされました。
今となれば、それらは私が教えられないことを、クラスメイト(と、そのバックにあるご家庭)から学ばせてもらっていたのだなぁと。それはそれは恵まれた、素晴らしい環境だったようです。子どもを取り巻く環境の大切さを痛感しました。
何度でも言いますが、息子には散々頭を抱えさせられました。ドイツに残ったこと自体が間違っていたのかもしれないと悩んだことも多々あります。
しかし、ドイツ語が乏しい親の元で、良く頑張った方なのかもしれません。きっと、クラスメイトが引っ張っていってくれたのでしょう。
息子も、「ベルリンに越してきてよかった。どのギムナジウムの話を聞いても、自分にはあのギムナジウムが一番合っていたと思う。お母さん、(ドイツ語喋れないのに)ドイツに残ってくれてありがとう。」と言ってくれて、感無量であります。
とはいえ、狭い世界しか知らない私たちにとって、という話ですので、他にも素晴らしい学校はたくさんあると思います。
私が書いた【ベルリンのギムナジウムの条件】
息子たちが考える「うちのギムナジウムの長所」が、志望校ランキングとリンクしているかどうかは別として。
本人たちが、ベルリンに数あるギムナジウムの中で、ここに通って良かったと心から思っていることがわかってホッとしました
しかし、これはあくまでも、うちの子にとって良かったという話です。すべてのお子さんにとって「一番のギムナジウム」になるとは限りません。加えて、学年によってもカラーが違いますよね。
つまり、通ってみなくては誰にもわかりません。だから、評判だけ聞いてギムナジウムを選んでも、後から後悔することだって大いにあり得るわけです。
そこで、自分の子どもにぴったりなギムナジウムの条件を書き出すのです。
我が家に当てはまるかどうかわからない情報を集めるより、よっぽど確実です。
当時、情報ゼロの中書いたリスト。書いた後に「たまたま」知り合った方から「たまたま」聞いたギムナジウム。これだ!と直感で飛び込みました。
あれから8年経った今、子どもたちが口にする学校の良さが、この条件と見事に重なっていたのです。深く深く、感動しています。
実力だけでなく、縁も大事!
どんなに実力があっても、どんなに可能性があっても、それを活かせる場所がなくては発揮できません。
その活かせる場所と巡り合うのに、「縁」が必要です。目的地まで繋いでくれる「良縁」です。あと、タイミングも。
残念ながら、実力がある人こそ、この「縁」やタイミングを軽視する傾向にある気がします。実力があるのにタイミングを誤ったり、不十分な環境で実力を発揮できなかったりして燻ってしまう人がなんと多いことか。
私の経験上、情報を集めすぎて頭でっかちになると、うまくいきません。もしかしたら、8年前も、情報ゼロだったから良かったのかもしれません。
行き着く先を決め、期限を決めたら、あとは有能な執事に任せるかのように、流れに身を任せます。すると大抵、不思議な出逢いがやってきて、いつの間にか目的地まで到着します。
時に、遠回りに感じる出来事が起きたりします。それは、そこを経由しないと目的が達成できないからです。不安になる必要はありません。目的地に近づいている証拠だと腹を括り、乗り越えましょう。ステップアップした自分は、きっと目的地にふさわしく成長しているはずですから。
「叶えたい夢」「達成したい目標」「期限」を具体的に書き出すと、選択の指針にもなります。不思議とその方向に導かれていくのです。ええ、めっちゃ本気で言っています。だって何度も何度も経験しましたから!
これから受験を迎える皆様、ぜひ書いてみてください。きっと、結果オーライになりますよ。
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