ドイツの歴史教育におけるナチスドイツ。どのように学んでいるのか。ディスカッション式の授業とはいったいどんなものなのか。
日本への逆留学を経て、ドイツ育ちの息子が詳しく教えてくれました。
【逆留学シリーズ④】、現場からお伝えします。
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静かな日本の授業・賑やかなドイツの授業
日本の授業でいちばん驚いたこと
この、日本の授業がシーーーーンと静まり返っている光景。私には懐かしい思い出です。なぜ生徒が気配を消しているのかもよく知っています。でも息子にとってそれはそれは大きな衝撃だったそうです。何度も「あれは本当にびっくりした」と言っていました。ディスカッション方式ではない授業を受けたのが初めてだったからです。
発言が最も評価されるドイツの授業
ドイツの授業は、とにかく間違っていようがいまいが生徒はガンガン手を上げて意見を言います。
先生が喋っている最中でも挙手して質問をします。(この教育があの我の強い、言い訳が達者な大人を量産するのね、とも思ったり)
ちなみに息子の学校の場合、成績評価基準はこんな感じです。
発言しない日が続くとあっという間に成績が下がってしまう。だから生徒たちはどんどん発言します。
他の生徒の意見を聞いていないと自分も発言できません。どんなに寝不足でも授業中は寝ていられないと言っていました。
そのような授業しか知らなかったら、日本の授業に驚くのも当然なのかもしれませんね。
ではドイツの学校では具体的に何をディスカッションしているのでしょうか。
ドイツの学校で学ぶ「ナチスドイツ」
ドイツにも過去から目を背けた歴史教育を行なっていた時代があった
ナチスドイツを反省すべく、ドイツでは歴史教育において繰り返しナチスドイツのテーマを取り上げている。日本もそうすべきだ!と言う声を聞きます。私ももちろんそう思います。
ところが、それは最近の話なんだそうです。
「お手本」とされるドイツの歴史教育を遡ってみると、ドイツも自国の汚点から目を背けていた時代があったのです。
終戦直後、連合国軍による「非ナチ化」政策に反発する国内。独裁政治の反省を歴史教育に取り入れることに戸惑い、拒否反応を示す人たち。そこからどんな道を辿り現在の歴史教育に変化していったのか。
とても興味深い記事が「ドイツニュースダイジェスト」に載っていたので、興味がある方はぜひ目を通してみてください。
特に「ドイツの現代史教育が迎えた5つのターニングポイント」という章(真ん中あたり)はおすすめです。
【ドイツ人は過去から何を学ぶのか?】ドイツニュースダイジェストより
息子がドイツの歴史授業で学んだ「ナチスドイツ」
では息子が具体的に「なにを」「どうやって」学んだのか聞いてみました。
これらのことを、繰り返しディスカッションしていくそうです。息子の学校ではこのテーマが半年間も続いたそうな。他校ではどうなのでしょう?
年齢を重ねると、ナチスドイツをあまりにしつこく取り上げるドイツの歴史教育にうんざりするドイツ人も多いみたいです。
ドイツのディスカッション式授業
基本的にどの教科もディスカッション式で進むドイツの学校。歴史の授業はこんな感じで進んでいくそうです。
- 先生がその日のテーマを伝える
- そのテーマについて何か知っている人いる?と生徒に尋ねる
- 知識ある生徒が挙手して発表
- さらにテーマを掘り下げ、生徒同士のディスカッションが始まる
- 最後に先生が要点をまとめる
生徒が間違ったことやテーマから逸れたことを言っても、他の生徒や教師がその発言を否定することは絶対にないそうで。やんわりとメインテーマへ軌道修正するのですって。だから生徒も躊躇なく発言できるのですね。
日本とは違うテスト形式
最近受けた歴史のテストでは、ナチスドイツのプロパガンダについて問われ、数ページに渡って長々と記述式で解答したと言っていました。
歴史のテストは基本的に記述式だそうで、授業で散々議論しているから、それに参加していれば書ける内容なんだそうです。
なるほど、デンマークの本に書いてあった「過去の成功や失敗から学び、今後の国の発展に活かすところに歴史を学ぶ価値がある」というのはまさにこのことで、学ぶ方法として対話やディスカッションが大事だということがやっと繋がったのでした。
次回、最終回はディスカッションの重要性を息子が語る、です。