立ち上がれ娘2

ドイツの教育事情

ドイツの小学校 - 娘が再び立ち上がった日

2019年12月2日

ドイツの国民性の一つに、保守的な面が強いことが挙げられます。それは人間関係においても。(もちろん、オープンな人もいますし、地域によっても異なります)

例えば大きなパーティーなどでは必ず知り合いを探して捕まえて、最後までその人を離さずに一緒に居続けることを好む人が多いところとか。

小学校へ入学する時も、学校側から必ず聞かれるのは同じ新入生に友達はいるかどうか。そこで名前を挙げると、なんと同じクラスにしてもらえるのです。

しかも、ドイツの4年制の小学校は基本的に卒業までクラス替えがないところが多い。幼稚園から仲が良かった子と、幼稚園から小学校卒業までがっちり同じクラスになれるというわけです。(6年制の場合は3年生もしくは4年生でクラス替えを行う学校もあります)

ドイツに来た当初、この文化に戸惑いましたが、そのおかげで息子は今でも引っ越す前に通っていた小学校の頃のクラスメイトととても仲良しです。良い面もあるのは確かですね。

子供の人間関係を死守する親たち

ドイツの小学校はそんな感じですから、もちろん親も子供の人間関係に保守的だったりします。幼稚園時代、我が子と仲の良かった子がどの小学校へ入学するのかを気にします。仲の良い子と「一緒の」学校へ進学し「一緒の」クラスになることを最重要事項とする。

自分の子が知らない子たちの中で孤立しないように細心の注意を払うだけでなく。時によっては入学を1年遅らせてまで子供の友達と「一緒の」クラスになるように調整します。そして学校側も全面的に協力する。

確かに子供達にとっても安心材料になるでしょう。ただし私にとってそんな親たちは時に少し過保護に感じます。実際長い目で見たときにどちらが良いのかは分かりません。

さて、小学校1年生になるタイミングでベルリンへ引っ越してきた娘はというと。そんな子たちが集まったクラスに単身で飛び込み、馴染むのに少し時間がかかりました。

もちろん仲良くしてくれる子もいるんですよ。でも、何か大事な時、例えば二人一組で何かをやる時にあぶれたり、大事な取り決めをする時に後回しにされてしまうことが多々ありました。もちろん少々気難しい娘の性格も影響しているのでしょうけど、それだけでは無いであろう雰囲気も感じていました。 

※まずはこちらを読んでいただくと、ドイツの小学校の雰囲気が少し理解していただけるかと。

ドイツの小学校で娘に起きた事件

そんな環境下で自力で道を切り開き、コツコツと交友関係を広げていった娘。おかげさまでメンタルたくましく育ちました。

今年の9月から4年生になった娘は、社会科の授業でプレゼンテーションをすることになりました。(ドイツの小学校はプレゼン多め)

二人一組でテーマを決めて発表することになり、娘はクラスの中で比較的仲の良いAちゃんと組みました。

やる気満々だった娘は、Aちゃんと決めたテーマに興味を持ち、積極的に取り組んでいました。

でもAちゃんは元々あまり集中力がなくじっと座っていられない子です。

娘がレポートを作成している横でAちゃんはふらふらと遊んでいる。自分ばかり頑張っていてAちゃんは何もしてくれないと、娘はよくぼやいていました。

ある時、娘は体調を崩し3日間学校を休んだ後、4日ぶりに登校しました。

その日の夕方、娘はしょんぼりと俯いて帰宅しました。その姿に驚いた私は何があったのか尋ねると、娘が学校を休んでいる間にこんなことがあったそうです。

自分さえ良ければ、の連鎖

ある女子が「私、やっぱりこの子じゃなくて別の子とプレゼンしたい」と言いだしました。結果として1人ずつペアがずれていき、娘と組んでいたはずのAちゃんは別の子と組むことになっていたのだそうです。しかも、娘が頑張って準備していたテーマもAちゃんたちに取り上げられてしまいました。

同じようにあぶれてしまったのは娘の天敵でもある、女版ジャイアンのBちゃん。(このBちゃんのことも過去記事にちょろっと書いています。)

仕方なく娘がBちゃんに「じゃあ一緒にやる?」と聞いたら、気の強いBちゃんは「えー別に私、1人でやるし!」と全然つれない返事だったそうで、いやもう全部ひっくるめて酷くありません?

普段は子供同士の揉め事にはよっぽどのことがない限り口を出さないようにしているのですが、さすがに今回は娘が不憫で不憫で…。思わず「お母さんがAちゃんのママに話してみようか?」と申し出てしまいました。

でも娘はポロポロと涙をこぼしながら、「それはいい。」って言い張るんですよね。(私の殺気がバレたかな)

ピンチはチャンス?

じゃあどうする?何か良い方法を一緒に考えようか、と娘を抱きしめながら、どうするのが一番良いのかぐるぐる考えました。

確かに今回のことは腹が立つし酷いことかもしれない。でも、今までもAちゃんはあまり真面目にやっていなかったし、あのまま一緒にやっていてもあなただけが大変な思いをしていたのではないか。

もしかしたらこれはチャンスかもしれない。Bちゃんはあんな言い方したかもしれないけど、ちゃんと話せばわかってくれるのかもしれない。

「クラスで一番かっこいいプレゼンを一緒に作ろう!」ってもう一度あなたから声をかけてみたらどうだろうか。それに、また違うテーマを調べるってことは、知らないことをたくさん知ることができるから、きっと楽しいと思うよ。それらの本音を、噛み砕いて伝えてみました。

娘はじっと考えていて、私の案を良いとも悪いとも言いませんでした。なんせ相手はずっと天敵だったBちゃんです。今までのギスギスした関係や辛辣なやりとりを私も知っています。娘は「とにかくこの先は自分で考えてどうにかしてみる」と言ってその夜は眠りにつきました。

娘、動き出す

次の日。

いつもと同じように、そしていつも以上に祈りを込めて「楽しい1日になるよ!」と声をかけて学校へ送り出しました。

その日はずっと、犬の散歩をしながら、電車に乗りながら、トイレにこもりながら、ムダ毛の処理をしながら、何をしていても娘のことが頭の中から離れませんでした。

夕方、娘が笑顔で帰宅しました。理性を総動員して平静を装いつつ「どうだった?」と声をかけたら、ニカっと笑顔でガッツポーズ。何があったの?と尋ねる私に娘は説明してくれました。

学校へ行き、Bちゃんに思い切って「2人でちょっと話したい」と声をかけたのだそうです。そして2人きりになった時にこう伝えたそうです。

「あなたが私のことをあまり好きじゃないのは私もわかっている。でも、私はあなたと一緒にプレゼンの準備をしたい。そして、クラスで一番かっこいいプレゼンをやり遂げたい。どう、一緒にやらない?」

Bちゃんは「いいよ」と答え、それからは2人であれこれアイディアを出し合い、すごい勢いで準備を進めているのだとか。

災転じて福となる

しかも、彼女と一緒に決めたテーマは、彼女のお父さんのコネもあり、なかなか手に入らない情報が入手できて内容も濃くなっているのだとか。

その日から娘とBちゃんは急速に仲良くなり、休み時間も一緒に楽しく遊ぶようになったそうです。

まだプレゼンは終わっていませんが、Aちゃんと準備をしていた時よりもずっと楽しそうですし、完成度も高くなりそうです。結果オーライ!

その後、プレゼンはとても良い評価をもらいました!

9歳なりに大きな勇気を出して一歩を踏み出し、自分の力で問題解決をした娘に感動。全力で褒め称えました。

成績で一番を取るよりも、何よりも素晴らしいことをあなたは成し遂げたのよ!と。そんな娘を心から誇りに思います。

人間関係に悩みながらも試行錯誤し、少しずつ成長していっているのですね。

母としては言葉にできない思いが胸に溢れてきてしまうのです。私の小さな胸はもう熱い想いで満タンです。

過去より未来を優先に生きる

人間関係に保守的なのは、もちろんドイツの小学校だけではありません。もしかしたら今回の件もそれは関係ないのかもしれません。

世間はどうであれ、私はやはり子供にはどんどん新しい世界を広げていってもらいたい。これからも新しい世界に飛び込む勇気を持ち続けて欲しいと思っています。

だから知り合いがいるかどうかで進む道を決めるのではなく、自分が何をしたいかで進むべき道を決められる人間に育って欲しい。

自分の狭いコミュニティさえ良ければその他の人はどうでも良いと切り捨てないでほしい。

視点を高くして長い目で見て行動を決めてほしい。

子どもにそう説く前に、私自身が新しい世界に飛び込む姿を見せ続け、その結果幸せに成長している姿を見せていきたいと思ったのでした。

で、人間関係でぶつかりまくっている娘の姿を見て、つくづく思うのです。

昔の私にそっくりだな、って…

(責任を感じております)

ドイツが保守的だというと驚かれることがありますが、こんな記事もあります。

それから数年後、ドイツの小学校からギムナジウムへ進学した娘にはこんな友人ができました。

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