ドイツの小学校事情2016

Thursday 17 March, 2016

ベルリンへ引越すってことは、子供達が転校するってことで。これがですねぇ、新居を探すよりも大変でしてねぇ。何が大変って、転校先を見つけるのが大変なのであります。 

まず、外国人である私たちが長くドイツに住む決意をし、子供達にドイツの教育を与える選択をしたならば、小学校選びで最も重きをおくべきところは「ドイツ語を母国語とする生徒が何割を占めているか」になります。なぜなら、知識を得て自分の頭で咀嚼し、思考を組み立てるのに一番大切なツールである「言語」がクラス内で統一できていない場合、どうしても授業のレベルが下がるからです。

実際に、現在息子が通っている小学校はドイツ語を母国語とする生徒が9割以上を占め、学力もなかなか高くギムナジウム進学率100 %だったりします。幼稚園でドイツ語をマスターした息子も、さすがにドイツ人家庭の子と比べると語学力が劣るので、入学した時点で他の生徒よりかなり遅れを取っていました。でも、100%ドイツ語が飛び交う中で3年間を過ごし、今はドイツ語の成績も上がり、下手したら他のドイツ人よりも書き取りや読みのテストで高得点を取ってくるようになりました。もちろん本人の努力の結果ですが、その努力を引き上げてくれたのは周囲の環境です。 

ちなみに息子と同い年の男の子(日本人)で半数以上がトルコ人という小学校に入れている方を知っていますが、未だにドイツ語が定着しないと嘆いていました。もちろん学力にも問題があります。息子が分厚いドイツ語の小説をスラスラ読んでいるのを見てめっちゃ驚いていました。うちの子じゃ考えられないと。ま、でもその子はスポーツ万能で他の面で秀でているので、ご両親も頭を切り替えてそちらの方に力を注いでいます。彼は本当に才能があると思うので夢が叶うように私も願っています。 

が、ドイツに永住するつもりでドイツの教育を選択し、大学進学を考慮するのなら、生徒が授業以外で何語をしゃべっているのかというのは大きな問題になってくるのです。

引越し先のベルリンは元々移民がとても多い地域です。その上失業率が高いため、他州と比較しても学校教育のレベルが低くなっており、問題となっています。でもこれはよくよく調べてみると、教育レベルの足を引っ張っているのは旧東ドイツ側であり、裕福な家庭が多い旧西ドイツ側はドイツ全土で比較しても素晴らしいレベルの学校がいくつもあり、優秀な人材をじゃんじゃん育てていたりする。

と、ここまでは数年前までの話。 

今も大まかに言えばそんな感じなんですが、数年前からドイツには移民に加え膨大な数の難民がなだれ込んできています。その結果、今までそこそこのレベルを保っていた旧西側公立校に母語も宗教も違う生徒たちが押し寄せる結果になりました。ドイツの公立校は授業料無料ですから、そりゃ誰もが入学させたがりますわ。ベルリンはもちろん、ハンブルグ、フランクフルトなどの比較的大きな都市にある無宗教の小学校は(西側の小学校でも)下手すると50%以上がドイツ語を母国語としない子供が占めており、授業が今まで通りのペースで進められなくなっているそうです。 

子供だけでなく親も学校側と全くコミュニケーションが取れないので(しかも親はそれを全く気にしていない)学校によっては親向けの無料ドイツ語授業を行ったりしている。(が、親がそこに通うかどうかは別) 

そんな状態なので、現在ドイツの大都市ではカトリックやプロテスタントなど特定の宗教(キリスト教)を軸とする小学校の人気が再び高まっているのだとか。(さすがにこういった小学校にはムスリムが来ないので)
あとは授業料を必要とする私立小学校も大人気で、要は宗教と授業料とで生徒を線引きしているということ。ますます小学校同士の格差が広がっている状態なのです。 

旧西ベルリンの比較的裕福な地域の公立校を調べると、ここ数年でトルコ人による暴力事件が起きたり(もちろん暴力事件はトルコ人だけではないけど)、ムスリムの親たちの訴えにより校則を変えられたりなど、なかなかカオス。ちょっと前まで安全でそこそこの学力を保っていた学校でもこの有様。 

難民を受け入れることに対する賛否をここでは語りませんが、ベルリンで現在起きているこれらの問題は、まるでこれからドイツ全土で巻き起こる問題を先取りしているかのように見えます。ドイツがこれらをどう克服していくのか楽しみですし、移民の1人として私たちも取り組んでいかなければならない問題であると認識しています。 

さて、そんな状況の中で私たちはどうやって小学校を探せば良いのか。とりあえず「良い」と言われている小学校は申し込みが殺到し、どこも定員オーバー状態。あ、ここいいじゃん?と思って調べると、実は半数以上がドイツ語を母国語としない生徒だったりとか。すんげー調べまくって、すんげー吟味して、悩みに悩みまくった後にとりあえず西側にある3校に絞りました。

第一志望は、ベルリン屈指の高級住宅地にある公立小学校(無宗教)。前述した現状と矛盾していますが、このあたりは特別な住環境内にある上に学区を指定しているため、良質な教育を受けられる貴重な公立小学校なのです。ま、学校が無料な代わりに家賃をたっぷり払わないと通えないのですけど。

第二志望は少し賑やかな地域にある小規模の私立小学校(無宗教)です。ここはヨットクラブなどを所有しており、希望者はクラブ活動でヨットを操れるようになるのです。学費も月に500ユーロ弱と良心的なのに家族のようなケアをしてもらえると、ここもなかなか人気の小学校。

第三志望は、小中高一貫教育の私立小学校(プロテスタント)。学費は同じく月500ユーロくらい。(ベルリンの私立小はだいたい月300〜500ユーロ。インターナショナルスクールは1000〜2000ユーロ) 

この3校を、1日で全部見学したのですよ!さすがに親子でヘロヘロになりました。結果は、予想通り第一志望が一番良かったです。まず、校舎や校庭、体育館などの設備が素晴らしく、公立校とは思えないほど。(実際、第二、第三志望の私立小よりも広くて綺麗で明るかった) 

そして何よりも校長先生が若く気さくで感じの良い方で、あまりにも普通に掲示板をいじりながら生徒の周りをフラフラしていたので、最初見たとき用務員のおじさんかと思ったほど。この学校の校長になるくらいだからきっと優秀な方なのでしょうけど、全然堅苦しさを感じさせなくて、とても好印象。 

他の2校ももちろん良かったのですけどね。小規模の私立小は生徒を管理しすぎていると感じたし、モクモクと煙を出している何かの工場が視界に入ったりとか、引っかかる点が幾つかありました。それに1校目を見た後だったのでどうしても見劣りしちゃって。 

息子も「最初の小学校がいい!」と迷いなく言いました。もちろん私たち親も大賛成。息子はすぐにでも秋から始まる新学期に4年生として転入する手続きを進めることになりました。 

が、ここで問題が。私の子供って息子だけではなく、秋に新一年生になる娘もいるんです。でも、新一年生の空きがない!!! 

どの小学校も新一年生は定員オーバー状態で、waiting listに名前を書かされるだけ。なんてこった! 

でもまあ、学校ってどこも兄弟優先枠ってのがあるから、息子に入学許可がおりたら、リスト中の娘の優先順位が上がるってことです。ああ、まだ宙ぶらりんのヤキモキする生活が続くのか。 

校長先生が「僕には一切の生徒の定員管理権限がなくて、秘書が全て管理している」と言っていたので秘書さんと話そうと思ったら、その秘書さんというのが眼鏡かけてニコリともせず机に向かっているような女性で……校長先生と真逆!!!!ま、校長先生がかなりくだけた感じだから、それくらい真面目そうな人じゃないと務まらないのかもしれません… 

でもまあ、正式に息子の入学許可が下りたらきっと奇跡は起こるでしょう。 

以上、小学校あれこれでした。 

さあ、小学校が決まったら次は新居探しです! 

果たして、あの超高級住宅街に庶民の私たちが住めるようなアパートはあるのでしょうか。 

つづく 

(写真は息子の現クラスメイト)